無常をしるとき

直木賞作家・井上ひさしさんはある日、銀座の文具店で「一世紀カレンダー」というのを買った。1970年から2069年までの3万6500余日が、新聞紙2ページ大のボール紙にびっしり印刷されたものだ。仕事で真夜中にそれを眺めるうちに、氏は気分が滅入ってきた.
(ああ、俺はこのカレンダーに記されているどれかの日に、この世から消え失せるのだな.人間なんてはかないものだ。たかだか新聞紙2枚大の中に一生がスッポリ収まってしまう。もう今夜はやめだ)
という結論にたどりつき、”うどんを食って寝てしまった”
そのカレンダーは友人に譲ったものの、また欲しくなった氏は、ふたたび銀座の店に買いに行った。ところが、女店員はこういったのである。
「あれが発売禁止になりました.あのカレンダーを眺めているうちに自殺した人が2人も出たんだそうです.」

「魂を磨く」1993.成瀬雅春 出帆新社 より

 

花は、実は死体なんです。

草にとって、花は死体なんです。草木染めでも、花から染料は取れません。茎か葉っぱからしか取れません.
花の色は茎や葉の色なんです。
死体を茎が支えて立っているのです。

大野慶人さんのお話より(2002年5月22日)